今思いかえせば、大学時代の就職活動時こそ私が最も輝いていた時期だったと思います。
選考に落ちたり圧迫面接に苦しみながらも、なんとか勝ち取った日本有数の大手企業の内定。それはもう嬉しかったですよ。有頂天になりました。
なんだかんだで世界は自分を中心にまわっていると錯覚したものです。正直なところ、完全に調子に乗っていたと思います。
また、内定が決まってからは貯金を盛大に浪費するようになりました。今思えば何してんだろうと思いますが、当時は大手に内定したのだからバカみたいに給料が上がってこんなはした金なんて捨てるほど稼げるだろうと真剣に思っていました。無知って恐いですね。
結局、大学を卒業するまでバカみたいにお金を使い続けて人生を謳歌しました。好きなものを買い、好きなものを食べて飲んで、余暇を自由気ままに生きていました。私の人生で最も自由な時間でした。
地元をバカにして意気揚々と引っ越すバカな私
そんな私も大学を卒業するときを迎え、地元を離れて内定企業のある地域へと引っ越すときがやってきました。自由な時間の終わりです。しかし相変わらずバカな私は、地元を完全に見下して他の地域へと旅立っていきました。
こんな地元にいつまでもしがみつくのは能力のないバカしかいない。そう思いながら、地元に残ると宣言していた友人たちをバカにしていました。なんで1回きりの人生なのに高みを目指さないの?などと思っていたものです。いわゆる意識高い系ってやつですね。
後で振り返れば、就職先に地元を選択した友人たちは皆、それぞれしっかりと考えての選択だったと思います。ある友人は地元に残ることで実家暮らしを継続し、1人暮らしでは到達できない額の貯金を悠々に達成しました。
中小企業を選択した友人も然りです。その友人は大企業で働くブランドよりも株やFXなどの投資に重きを置いていました。ゆえに激務と言われる大手は敬遠して、比較的良い噂のあるニッチな企業に就職しました。結果、仕事と投資をうまく両立させてかなりの額を稼いでいます。
皆、本当にしっかりしているなと思います。少なくとも何も考えずにとにかく知名度と企業規模、平均年収だけに注目して、何が何でも大手に入ることだけを考えていた私よりはまともです。
もちろん、大手に入ることが悪いことだとは思いません。むしろ、大手に入る方が良いことが多いでしょう。ただし、大手に入ったからと言って人生は安泰ではありません。当時の私はそれが理解できていませんでした。大手に入ったら人生安泰と真剣に思っていました。
また、大手の内定を得られたのも本当の実力かどうかなんて怪しいものです。めぐり合わせたタイミングと縁によって決まることもあるでしょう。
それどころか、後々の待遇から察するに単なるソルジャー要員での補充だったとも思えます。それを自分の実力だと過信するなんてもってのほかです。ここを勘違いして自らの実力を過信して調理に乗っていた私は本物のバカです。
きっと、その後訪れる地獄のような社会人生活はその報いだったのかもしれません。
待っていたのは圧倒的な孤独
地元を離れて見知らぬ土地へ引っ越した私を待っていたのは、会社と自宅を往復するだけの陳腐な生活でした。新入社員の研修中ということもあり、まだ本配属ではなかったのですが、それでもイメージとはかけ離れたつまらない生活を送ることになりました。
加えて、地元とは地域が違うので言葉の違いにもストレスを感じます。日々、何かとよそ者として扱われることが多くてイライラします。言葉のイントネーションが違うだけでここまでストレスになるなんて思っていませんでした。
孤独です。
朝起きては会社に行き、帰ってきては寝る。本当に単調でまったくおもしろみのない生活です。それでも、社会人なのだから仕方がないと割り切っていましたが、内心の自尊心は徐々にすり減ってきました。
何か働くということを勘違いしていたかもしれない。
このときになってやっと気づきました。
もしかしたら何か大きな間違いをしてしまったのかもしれない。直感的にそう思いました。時すでに遅しですけどね。
企業と仕事、あるいは土地が合っていない気がすると薄々感じながら新人研修の日々を過ごしました。
本配属が決まってから本当の地獄が始まる
新人研修が終わり、本配属となった私を待っていたのは地獄のような生活です。
何をもって地獄というかですが、運が悪いことに何もかもがハズレでした。
人間関係?最悪です。学生時代には出会ったことのないような性格のねじ曲がった人間、不愛想な人間、短気な人間しかおりません。よくもまあここまで悪いのを集めたなといったくらい最悪な人間しかいない職場です。
朝挨拶をしても挨拶は返ってきません、かといって挨拶をしなかったら無視をしたとキレられます。仕事を教えてもらっていないのに、なんで仕事ができないんだと罵倒され続けます。完全なパワハラです。仕事をロクに教えてもらっていないまま外部の人間や他部署の人間との折衝に送り込まれるので、どこにいってもバカにされて罵られる毎日です。
何をしたら怒られないのかサッパリわかりません。まるで新人いびりのごとくあらゆる人間に怒鳴られます。心が折れそうです。
労働時間、これも最悪です。朝の始業時間は早いくせに残業が長く、まともな睡眠時間が確保できません。遅いときは深夜0時をまわってから仕事を終えるのに、次の日も朝7時半には会社にいないといけないってのが明らかにおかしいでしょ。
通勤時間がおよそ1時間、どうがんばっても睡眠時間が5時間もありません。上司は「4時間睡眠で倒れそうだよ~」と毎日自虐自慢をしています。仕事中毒のバカにしか見えません。
周りの人間からも生気を感じられません。常に眠そうで目にクマがあり、表情はどことなく死んでいます。どいつもこいつもため息ばかりついているのでこちらまで気分がまいってきます。
そんなかんだで学生時代に思い描いていた生活とはかけ離れた地獄のような社会人生活が始まりました。大手に入って華やかな社会人生活を送るんだと意気揚々としていた学生時代の私を全力でぶん殴りたい気持ちになりました。