面接官に挨拶を無視される散々な面接

面接官を小部屋で待ってからしばらくすると、人事の担当者が配属先の面接官を数人連れてきました。

人は最初の数十秒で相手を判断する。そんなことを聞いたことがありましたので、とにかく元気さをアピールしようと意気込みました。面接官達が部屋に入って来るや否や元気よく挨拶をしました。

「本日はどうぞよろしくお願い致します!」特に問題なく元気よく挨拶をしたと思うのですが、面接官達の反応は予想外の無反応です。

「えっ、なにコイツら。ちょっとありえないんだけど」

私の方が最初の数十秒で相手を判断してしまいました。面接官達は部屋に入るや否や、私への挨拶を返すよりも、面接部屋の椅子の位置やら何やらが気に食わない様子です。「この椅子の位置はもっとコッチだろ」とどうでも良い議論を話し始めました。私の挨拶は椅子の置き位置以下だそうです。

あまりにも予想外の先制パンチを食らってしまい、私の頭の中は真っ白になりました。ただし、気持ちは動転しつつもなんとか引きずってはいけないと思いました。

面接官達が席につくと、人事の担当者が形式的な挨拶を始めました。「本日はお忙しい中…」と何かを話し出しました。このとき、話している内容が頭に入ってきませんでした。「そんな形式的な挨拶の前に、さっきの挨拶を無視したのは何なんだよ!そっちの方が一大事だろうが!」と内心のイライラがおさまりません。

人事の担当者の挨拶が終わると、席に着席してくださいと指示があり、ようやく面接が開始されました。

面接が始まると人事の担当者より基本的な質問をいくつかされました。

「転職の動機は何なのか?なんで転職するのか?」「なぜこの会社を選んだのか?」「あなたは何をしてくれるのか?」

奇をてらったような質問事項はなかったので、事前に考えていた内容を丸暗記に聞こえないようにそれっぽく答えました。ここまでは想定通りの展開です。

何かとくたびれた印象の面接官

基本的な質問が終わると、次に配属先の面接官から職務内容に関する説明がありました。説明内容自体は一般的な仕事内容の説明ですが、内容自体よりも面接官の雰囲気が気になって仕方がありません。

覇気がなく、疲れていて、そして不愛想

第1印象はそんなところでしょうか。加えて、仕事内容を聞いていると、求人票には書かれていないような泥臭い内容もちらほらと出てきました。まあ、求人票なんてものは所詮は見栄えの良い釣り餌みたいなものだと思っていますので、それ自体には特に同様することはありません。しかし、なんといいましょうか。いかんせん激務っぽいフラグがいくつも立っていました。

この面接官達の疲れた雰囲気は普段の激務からきてるんじゃないか。そんな不安が頭によぎります。現在の仕事も激務なので、転職してさらに激務になっては本末転倒です。

どうしてもそれが気になってしまった私は、質疑応答の際についつい残業時間などの待遇について質問してしまいました。一般的に面接で残業時間などを聞くのは印象が悪いと言われていますが、どうしても気になって仕方がなかったのです。

「忙しいときは結構予想以上に忙しいと思ってください」

なんともいえない回答が返ってきました。面接官は濁したつもりかもしれませんが、この上ない激務フラグです。さらに、他の福利厚生や待遇面での回答に関しても、同じような濁した回答が返ってきました。そして、それらの質問に答えているときの面接官が明らかに不愉快そうにしていました。

決定的だったのは、私の現在の仕事状況を教えてくれと言われ、それに対して回答していたときです。

現在の労働環境、残業時間について隠すことなく伝えたのですが、面接官達は驚くことも同情することもなく、ただ一言だけ「ウチと同じような感だな…」とだけ呟いていました。

おかしいですよね。求人票を見る限り、今の私の仕事とはほぼ遠いほどのホワイト環境のはずなのに、面接官達はまるで私の今の職場の上司を見ているような印象を受けます。雰囲気は不愛想で、発言内容は激務な職場のそれです。どう考えても今と同じブラック企業に違いありません。

しばらく話が進むと、面接官の1人が「ウチも気力と体力が一番重要な仕事です」と言い出しました。だからさ、それならそれでなんで求人票を偽るの?月平均の残業時間は20時間じゃねぇのかよ。残業代が出るのが20時間なの?

話せば話すほど不愉快になっていきました。求人票の内容だけを見れば本当に輝いているホワイト企業に見えるのです。給料も仕事内容、待遇、勤務地、どれをとっても申し分ないレベルの有料求人なのです。それが実際はコレですか。つくづく失望します。

結局、終始グダグダのまま面接は終了してしまいました。

面接が終了するや否や、配属先の面接官はそそくさに出ていってしまいました。最後の最後まで不愛想でこちらに無関心なオッサン共でした。

転職活動は甘くないと痛感する面接落ちの連絡

面接が終わると人事の担当者が会社のエントランスまで案内してくれました。

このとき、最初に来た時とは別のルートを使い、職場の雰囲気を見ていきましょうとの提案をいただきました。初めて会ったときから終始、この人事の担当者は愛想がよく丁寧でとても好印象な青年でした。つくづく、人事は会社の顔なんだなと思いました。

別のルートで配属先の職場を見回っていると、先ほどの不愛想な面接官が通常の業務に戻っていました。そして、その面接官の見ている前で黙々と作業をしている従業員がいました。仕事中なので黙々と作業をするのはあたりまえなのですが、どことなく雰囲気が殺伐としています。

まるで私の今の職場を見ているようです。

このとき、薄々感じていたことが確信に変わりました。配属先の面接官達の雰囲気、態度、言動、そして実際の職場の雰囲気、社員の顔。そのどれをとってもブラックな環境としか思えませんん。

思えば、求人票に「急募」と書いてありましたが、まあこの職場なら辞めていく人がいてもめずらしくはないなと思いました。それほど、どす黒い激務なオーラに満たされた職場でした。私は絶対に働きたくないなと感じました。

人事の担当者はエントランスで簡単な挨拶を述べて「選考はまた追ってご報告いたします」と言っていました。もう、このときには心の中で「仮に選考に受かっていても辞退しよう」と思っていました。ここは現在の職場と同じサラリーマンの墓場です。ここに労働者としての未来はありません。

会社を出たとき、溜まっていた疲れが一気にやってきました。肩は重く、期待を裏切られた失望で歩き方から顔まで何もかもが疲れた人間になっていました。このとき、ある人物がうかびました。私が面接に向かう時にすれ違った、おそらく私の前に面接を受けたであろう人です。

あの疲れ果ててどことなく失望感を抱いた雰囲気、それはまさに今現在の私です。

なるほど、こういうことか。妙に納得して笑いがこみ上げてきました。同時に、転職活動はなかなかうまくいかないものだなと絶望がこみ上げてきました。わざわざ仕事を無理やり休み、精いっぱいの準備をしてきた面接がコレです。どうしようもない失望感と放心状態に陥りました。

翌日、その企業からの面接結果がきました。

結果は採用見送り、つまり面接選考落ちです。選考に落ちた理由は「覇気がないから」だそうです。覇気がなかったのはオマエらの態度が悪すぎるのと、求人票の何もかもが嘘っぱちだっただろうが。

どうせ受かっていたところで選考は辞退するつもりでいましたが、こうして実際に選考落ちの連絡を受けると心に堪えます。ツライです。

すべての企業がこんなんだったらどうしよう。否応でも不安が頭によぎります。中途入社を募集している企業なんて、今回の企業のような激務の会社しかないんじゃないか。心が折れそうになります。

とりあえず明日からも仕事です。今日のことは早く忘れてしまおうと思いました。これ以上、あれやこれやと考えても意味がありません。

在職中の転職活動、想像以上にツライです。

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